
「うちのチームは背が低いから、守りきれない」
「大きいチームと当たると、ゴール下でやられる」
「ディフェンス練習はしているのに、試合で抜かれる」
小さい選手が多いチームの指導者の方から、よくいただく相談です。
でも、背が低いチームでも守り勝つことはできます。
僕が継続して関わっているチームも、34対29のロースコアで勝ち切り、10年ぶりのベスト4に入りました。
練習試合で一度も勝てたことがなかった相手に、点を取り合ってではなく、守って勝った試合です。
この記事では、小さい選手を専門に指導している僕が、背が低いチームのディフェンス練習で大事にしていることをお伝えします。
ラダーや根性フットワークだけでは守れない
「とにかくラダーをやれ」「もっと細かく足を動かせ」「気合でついていけ」
こういう練習だけでは、試合で守れるようにはなりません。
バスケは陸上競技ではないからです。
どれだけ足が速くても、目で見た相手の動きを、すぐに体の動きにつなげる回路がなければ、1歩目が遅れます。
小さい選手に必要なのは、足の速さではなく反応のスイッチです。
「ディフェンスが下手」だと思われている選手のほとんどは、下手なのではありません。
反応のスイッチの入れ方を知らないだけです。
小さい選手のディフェンス 3つの反応

1. 構える:合図で一瞬に構える(ドロップリアクト)
2人1組になり、パートナーにボールを胸の高さから落とす、目の前で手を叩くなど、不規則な合図を出してもらいます。
その瞬間に、パッと腰を落としてディフェンスの姿勢を作ります。
ここで大事なのは、つま先で構えないことです。
「母指球に乗れ」「つま先で細かくステップを踏め」と教わってきた人も多いと思いますが、つま先立ちだと地面に力が伝わらず、蹴り出すことができません。
走り幅跳びの選手が着地するときのように、かかとから足裏全体で地面をとらえ、お尻の筋肉を使って構えます。
足裏全体で地面を強く押せるので、右にも左にも一瞬でスタートが切れます。
2. 誘導する:コースを限定して、ヘルプの方向へ(フットリアクト)
ボールばかり見ていると、相手のフェイクに簡単に引っかかります。
うまい選手は、ディフェンスのトップフット(前に出ている足)を狙ってアタックしてきます。
だから、相手の足元のステップを見て判断することが大事です。
トップフットを狙われたとき、何も考えずに真横にスライドすると、真ん中(ミドル)に切り返されます。
これをやられると、味方のヘルプが間に合いません。
正解は、斜めにスライドしてコースを防ぎ、味方がヘルプに出やすい方向へ誘導することです。
サイドライン際や、チームで約束したヘルプの方向へ追い込みます。
小さいチームは、一人で止めるのではなく、チームで守る仕組みが大事です。
勝負ドリル
- オフェンスはディフェンスのトップフットに向かってドライブを仕掛ける
- 決めたゴールラインを突破できればオフェンスの勝ち
- ディフェンスは斜め前にスライドしてコースを防ぐ
- オフェンスが切り返そうとした瞬間にボールを弾ければディフェンスの勝ち
はっきり勝ち負けを作ることで、試合以上の集中力で練習できます。
3. 間合い:ミラーリングでリズムを崩す
「常にワンアームの距離を保て」と習った選手は多いと思います。
でも、ずっと同じ距離でついていくだけでは、オフェンスは自分の好きなリズムで仕掛けられます。
ディフェンスの目的は、きれいについていくことではなく、相手をやりづらくさせることです。
そこで使うのがミラーリングです。
鏡と同じ動きをします。
相手が1歩進んできたら、まったく同じ幅で1歩下がる。
大きく踏み込んできたら大きく下がり、細かく来たら細かく下がる。
そうやって相手を焦らし、リズムが崩れた瞬間にボールを狙います。
勝負ドリル
- オフェンスはランダムに前後のステップを踏む
- ディフェンスはミラーリングでついていく
- オフェンスは3〜5回目のステップのどこかで、ランダムにアタックする
- タイミングを外して突破できればオフェンスの勝ち、ボールに触れるかコースに入りきればディフェンスの勝ち
3つの反応は、動画でも詳しく話しています。
バスケで抜かれないディフェンス|小さい選手の反応速度ドリル3選
オールコートは「詰める」のではなく「ギリギリの距離」
小さいチームが勝つには、オールコートのプレッシャーも武器になります。
ただ、「前から当たれ」と言われると、相手に詰め寄ってしまう選手が多いです。
詰めすぎると、簡単に抜かれます。
プレッシャーの正体は、触れないギリギリの距離です。
その距離を保ちながら、相手が止まった瞬間を狙います。
- シュートを決めたら、すぐに捕まえる
- ついていく方法は、スライドで押し出すか、クロスで相手の足に合わせる
- 止まり方は「1・2」ではなく「ホップ」
- トップスピードで抜かれたら、カバーダウン
オールコートマンツーマンのつき方|「前から当たれ」で抜かれないプレッシャーのかけ方
大きい相手のゴール下は「入れさせない」
背が低いチームが一番やられやすいのが、ゴール下です。
大きい選手にボールが入ってから守ろうとしても、押し込まれてしまいます。
前に出れば裏にパスを通され、後ろにいれば押し込まれる。
ボールが入ってからでは、この2択にハマります。
だから、ボールが入る前に正面へ入ることが大事です。
先に走って前に回り込み、そもそも大きい選手にボールを持たせないようにします。
背が高い相手の守り方|バスケのポストディフェンス3ステップ
リバウンドのコツ|身長が低い選手でも取れる3つの技術
チームでディフェンスを教えるときの順番
外部コーチとしてチームに入ると、直したいところは無限に見つかります。
でも、全部を同時にやろうとすると、全部が中途半端になります。
今僕が入っているチームでは、まずオフェンスから手をつけて、ディフェンスは夏以降にまとめて取り組む順番にしています。
ディフェンスを軽く見ているわけではありません。
小さいチームが勝つなら、1線から3線まで、どこかでみっちりやる必要があります。
ひとつ形になってから、次に行く。
これが、続けて入れるチームだからこそできるやり方です。
試合動画を見せるときも、ミスの瞬間ではなく、その数秒前を見せています。
ミスの原因の多くは技術ではなく、走ったか、追ったか、戻ったか、です。
小さい選手を活かすチーム作り|ミニバス指導で最大の壁は習慣だった
バスケの試合分析のやり方|試合動画を見るポイントとメモの書き方
ディフェンスクリニックでやっていること
名古屋市でディフェンスクリニックを開いたときは、小学3年生から高校3年生まで、20名の小さい選手が集まりました。
1日の流れは、こんな順番です。
- ステップワーク:逆足のかかとで蹴り出すスライド、横に振られたあと縦に来られたときのクロスステップ
- 対人ディフェンス:オフェンスをつけて、覚えたステップを使う
- 実戦形式:5秒1on1から2on2、3on3、5on5と人数を増やす
当日手伝ってくれた高校生は、こんな感想を書いてくれました(原文のまま)。
「今は試合じゃないし、ここでは監督もいないので失敗しても怒られないからとにかく挑戦してみよう」とコーチが声をかけたところ、その姿勢で練習に取り組む姿が多く見られ、チャレンジを肯定する環境が選手の積極性につながっていたように感じました。最初はぎこちなくても、やっていくうちに段々と感覚が育っていく過程が見えました。
ディフェンスは、失敗を怖がると1歩目が出ません。
練習では、失敗してもいいから挑戦できる環境を作ることも大事にしています。
名古屋でディフェンスクリニックを開催|小さい選手20名の練習内容と参加者の声
まとめ
- 小さい選手に必要なのは、足の速さではなく反応のスイッチ
- 構えはつま先ではなく足裏全体
- 斜めにスライドして、ヘルプの方向へ誘導する
- ミラーリングで相手のリズムを崩す
- オールコートは触れないギリギリの距離
- ゴール下は、ボールが入る前に正面へ入る
- チームで教えるときは、順番を決めてひとつずつ
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